ニキビ治療にイソトレチノインが効く理由と知っておきたい副作用

こんにちは、美容皮膚科医の前原律子です⭐️
今回は「イソトレチノイン」について、皮膚科の中でも少し“踏み込んだ”治療のお話をしてみたいと思います。保険の治療やケミカルピーリングなどをしてもなかなか治らない重症のニキビでお悩みの方には希望の光となるお薬ですが、その反面、副作用やリスクについても正しく知っておいてほしいお薬です。
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■ イソトレチノインってどんなお薬?
イソトレチノイン(Isotretinoin)は、ビタミンA(レチノール)誘導体で、皮脂腺を縮小させ、皮脂分泌を劇的に抑える働きがあります。
もともとは米国で開発され、1982年にFDA(アメリカ食品医薬品局)に承認されて以来、世界中で**難治性の重症ざ瘡(ニキビ)**に使われてきた内服薬です。
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■ なぜそんなに効くの?
近年のレビュー論文(Zaenglein AL, et al. JAMA, 2016)でも、イソトレチノインは以下のような4つのニキビ発生要因すべてにアプローチできる唯一の薬とされています:
1. 皮脂分泌の抑制
2. 毛穴の詰まり(角化異常)の改善
3. アクネ菌(Cutibacterium acnes)の抑制
4. 炎症の沈静化
そのため、通常の塗り薬や抗生物質で治りにくかった頑固なニキビに、8〜12週間で劇的な改善が期待できます。
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■ 実際、どのくらい効果があるの?
あるメタアナリシス(Lee et al., Dermatology and Therapy, 2016)によると:
• 通常の抗生物質療法では約40~50%の改善にとどまるのに対し、
• イソトレチノインでは**約85%の患者が長期寛解(再発なし)**を得たとの報告があります。
また、再発しても再投与によりほとんどのケースで効果が再現されます。
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■ 知っておきたい副作用
ただし、すべての患者さんにとって「魔法の薬」とは限りません。副作用も多く報告されているため、慎重な使用が必要です。
よくある副作用:
• 口唇の乾燥(90%以上)
• 皮膚の乾燥・かゆみ
• 眼や鼻の乾燥
• 軽い関節痛・筋肉痛
注意が必要な副作用:
• 催奇形性(妊娠絶対禁忌)
• 肝機能障害
• 高脂血症(特に中性脂肪)
• 精神症状(うつ傾向、気分の波)
• 炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎)との関連も報告あり
特に女性は投与前後6ヶ月の避妊が必須です。
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■ イソトレチノインが向いているのはこんな方
• ニキビが抗生物質や外用で改善しない
• 繰り返す炎症性ニキビで瘢痕ができてきた
• 心理的なストレスや自己肯定感の低下が強い
• 根本的に治したい気持ちがある
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■ 最後に:医師とよく相談して決めましょう
イソトレチノインは、体重あたりに投与できる量が決まっており、漫然と内服して良い薬ではありません。また先に述べたようにさまざまな重大な副作用の可能性がありますので、取り扱いに慣れていて、よく診てくれる先生のもとで、処方をしてもらい治療をすることがとても大事です。
ネットで自己判断で輸入して使うのは絶対にNG!
ささゆりヘルスクリニックでは、イソトレチノイン内服前に必ず血液検査をして臓器機能に問題がないかを確認して内服を開始します。
また、スキンケアやイソトレチノイン以外の治療との併用も可能です。
イソトレチノイン内服中は定期的に通院いただき、お肌の状態を確認していきますので安心です。
もし「何をしてもニキビが治らない…」と悩んでいる方がいたら、ぜひ一度ご相談くださいね。