前回『幹細胞とは』についてお話をしました。
復習がてら、ちょっと追加のお話も🌿
私たちの体はいつも同じ状態のままでいるように見えますが
実際には常に変化しています。
私たちの体を形成し生命を維持している数多くの細胞たちには寿命があり
絶えず新しい細胞に入れ変わっています。
死んでいく細胞を補うために
新たな細胞を生み出すことができるのが『幹細胞』なのです
幹細胞は何度でも分裂する能力「自己複製能力」と
いくつかの細胞に分化する能力「多分化能」を持っているので
それができるわけです。
ただ、幹細胞が正常な機能を発揮するためには
適切な環境、つまり幹細胞の働きを助ける支持組織が必要です。
さて、臓器の移植をする移植医療に様々な制限と限界があることから
幹細胞を用いた治療に注目が集まり始めました。
傷んだ場所に幹細胞を投与すれば、組織が再生するのではないか
という発想ですね。
しかしこの「幹細胞の移植」には培養にコストがかかり過ぎますし
培養そのもの、そして移植にも技術が必要です。
また血栓症のリスクなど患者さんの体への負担も懸念されました。
そこで登場するのが「培養上清液」です。
これは何かと言いますと、
幹細胞を培養して増殖させる際、幹細胞は自らの恒常性を維持したり自己保全をするために
大量の生理活性物質を出します。
幹細胞から放出された生理活性物質は培養液の中に溜まっています。
これが
培養上清液です。
培養上清液の中に含まれる生理活性物質は
全てがわかっているわけではありませんが
これまでに分析されているだけでも数百種類含まれていることが分かっています。
タンパク質の一種であるサイトカインと言われる分子量の大きいものから
エクソソソームと呼ばれるカプセルのようなもので分子量の小さいものまで
幹細胞の恒常性を維持し保全するための
様々な生理活性物質が含まれています。
つまり幹細胞が正常に働くための環境を作るための物質を
幹細胞自身が出している、ということなのです。
すごいですね。
ここで「エクソソーム」という言葉が出てきましたが
「培養上清液」=「エクソソーム」
ではなく
培養上性液の中に含まれる生理活性物質の一部がエクソソームなのです。
さて培養上清液の話に戻りますが、
培養上清液に含まれる生理活性物質の種類と量は
幹細胞の種類によって異なっていることが分かっています。
「そうなの??」と思われるかもしれませんが
各幹細胞が生きる環境が異なれば、当然かもしれませんね。
そのため培養上清液の作用も、どの幹細胞の培養上清液かで異なってくるわけです。
とはいえ、培養上清液の効果は大きく4つの効果があるといわれています。
①炎症を抑える機能
②炎症で傷ついた細胞を保護する機能
③体の中に存在する他の幹細胞を誘導する機能
④新たな血管を作る機能
培養上清液の生理活性物質のこの4つの機能によって、組織や臓器が修復・再生するための環境が整うわけです。
今回はここまで。
次回は幹細胞や培養上清液が実際に今どんな風に使われているか
など、お話ししようと思います。
ではまた👋