様々な分野で発展してきている再生医療。
芸能人の方が「幹細胞治療を受けて病気から復活した」
と言う話題から始まり
有名なYou Tuberさんが健康のために「幹細胞の点滴を受けている」と話題になったり、
最近ではお化粧品にも「幹細胞培養液を配合!」とか「エクソソーム配合!」
といった文言を見かけるようになりました。
でも実際、幹細胞って?培養液って??エクソソームって???
という方が多いのではないでしょうか。
今回は『再生医療』と『幹細胞とは』のお話。
🔹再生医療とは 〜再生医療の歴史〜
再生医療の最も古い形は、怪我や病気・加齢などで体の機能や形態が失われた際に
何らかの材料で補填するもので、
皮膚の移植は古代ローマですでに行われていたそうです。1)
その後長い年月を経て移植医療は発展し、現在様々な移植医療が行われています。
しかし移植医療では、健康な臓器の提供者が必要であったり、
拒絶反応のリスクなど様々な問題があります。
そこで移植医療と並行して発展したのが幹細胞を使った再生医療です。
(幹細胞については次の項で)
現在では『再生医療』とは
「機能障害や機能不全に陥った生体組織・臓器に対して、細胞を積極的に利用して、その機能の再生をはかるもの」とされています。(日本再生医療学会の記載より)
つまりやさしい言葉で言うと、
幹細胞を含む人のからだの「再生する力」を利用して、修復を促し元どおりに戻すことを目指す医療のこと
と考えていただければよろしいのではないかと思います。
🔹幹細胞とは
私たちのからだは、約60兆個の細胞からできており、その始まりは、1個の受精卵です。
受精卵が細胞分裂(増殖)によって「胚」になり、さらに細胞分裂を繰り返して多種多様な細胞に成長し、皮膚や脳、心臓といった組織や臓器がつくられます。このように、細胞が様々な組織や臓器に変化することを「分化」と言います。
完全に分化し、皮膚や血液のように組織や臓器となった細胞は「体細胞」と言います。
一方、分化する前の、これからいろいろな組織や臓器になれる未分化な細胞が「幹細胞」です。
幹細胞は以下の大きな特徴があります。
① 自己複製能:自らと同じ能力を持つ細胞に分裂する能力
② 多分化能:皮膚、血液、神経、血管、骨、筋肉など細胞を新規に作り出す能力
自己複製能力と、様々な細胞に分化する能力(多分化能)を持つ特別な細胞が幹細胞なのです。
様々な種類の細胞を作り出すことができる幹細胞には2つのタイプがあります。
一つ目は皮膚や血液など、ある程度決まった組織や臓器に存在し、決まった範囲の細胞のみを作るタイプの幹細胞で
組織幹細胞(体性幹細胞、成体幹細胞)
といいます。
組織幹細胞は、存在している組織や臓器、役目によっていくつかの種類があります。
*神経幹細胞←神経系の細胞を作る
*上皮幹細胞←皮膚の細胞を作る
*肝幹細胞←肝臓の細胞を作る
*造血幹細胞←血液系の細胞を作る
その他、生殖幹細胞・間葉系幹細胞・臍帯血幹細胞 などがあります。
もう一つは体のどのような細胞にでも分化できる能力を持ってい幹細胞で
多能性幹細胞
と呼ばれるものです。
人工的に作り出した多能性幹細胞が、
ES細胞(Embryonic Stem Cell)とiPS細胞 です。
現在再生医療に使われているのは1つ目の組織幹細胞です。
例えば骨髄移植がそれにあたります。白血病など血液のがんに対して造血幹細胞を移植するのが骨髄移植です。
🔹ES細胞やiPS細胞の問題点
「再生医療すると癌ができるんでしょ」「幹細胞は癌化のリスクがあるんですよね?」
よく聞かれる質問です。
ES細胞は胚性幹細胞とも呼ばれます。
人間の体を作る受精卵が数回の細胞分裂をしたところからある細胞の塊を取り出して培養したものがES細胞です。受精卵に手を加えるという点で倫理的問題があり、ES細胞の扱いは厳しく規制されています。
iPS細胞は普通の細胞からある操作により人工的に作り出された多能性幹細胞です。
成熟細胞をある遺伝子を組みこむことにより細胞が初期化されでiPS細胞となるのです。
ある遺伝子、と言うのがヤマナカファクターと呼ばれる遺伝子で
具体的にはOct3/4, SOX2, Klf4, c-Myc です。
この中のc-Mycが癌遺伝子であり、これが細胞内で活性化することで癌化する可能性が指摘されています。
また、iPS細胞を培養する間に、未分化なまま残ってしまったり、細胞分裂の間に遺伝子が傷ついたりしてそれらが癌化する可能性もあります。
こういった問題点があり、現在治療で使われる幹細胞は体性幹細胞のみなのです。
次回は幹細胞の機能と培養上清液について、です。
参考文献
改訂版 脅威の再生医療〜培養上清が世界を救う〜
上田 実 著 扶桑社